ビジネスフォンは、社内外とのスムーズなコミュニケーションを実現するために欠かせません。その運用を支えるために重要なのが、ケーブルの配線です。配線の仕方によって、導入コストや拡張性、トラブル時の対応範囲などが大きく変わってきます。しかし、配線方法の違いなどわからない人は少なくありません。
そこでこの記事では、代表的な配線の方法と、それぞれの長所と短所を解説します。配線の基礎知識を押さえ、最適なシステム選びに役立ててください。
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ビジネスフォンの仕組みと配線について
ビジネスフォンは、家庭用電話とは異なり、電話機単体では機能しません。主装置と呼ばれる、複数の外線や内線を一括で制御する小型の交換機機器と組み合わせて使用します。主装置は、社内通話や外線への接続、転送などの機能を担います。
各電話機（端末機）はこの主装置と接続されており、モジュラーケーブルを通じて1台ずつ接続されます。つまり、電話機の数だけ配線が必要となるのが基本構造です。
ビジネスフォンの3つの配線方法
ビジネスフォンを設置する際、配線方法が非常に重要です。現在広く使われているのは、主に以下の3つです。
- スター配線
- バス配線
- LAN配線
ここでは、3つの配線方法と、それぞれの長所と短所を解説します。これから解説するそれぞれの特徴を把握して、自社に適した方法を検討する際の材料にしてみてください。
スター配線
スター配線は、主装置から各電話機へ個別にケーブルを伸ばします。それぞれにケーブルを繋ぐため、配線経路が放射状になります。トラブルが発生しても、影響が一部にとどまるのが特徴で、企業規模に関わらず使いやすい構造です。
スター配線のメリット
スター配線の最大の利点は、障害発生時の影響範囲が限られる点です。たとえば、1台の電話機やケーブルに不具合が起きても、他の電話機には影響が及びません。また、どのケーブルが問題かを特定しやすく、復旧作業も比較的短時間で済みます。信頼性を重視したい企業に適しています。
スター配線のデメリット
スター配線は、各電話機ごとに1本のケーブルを必要とするため、設置台数が多くなるほどルートが煩雑になる点が欠点です。ケーブルの束が増えることで、見た目がごちゃつきやすく、どのケーブルがどの端末に対応しているかを把握するのにも手間がかかることがあります。整理や管理が必要なため、設計段階での配慮が重要です。
バス配線
バス配線は、1本の幹線ケーブルからローゼットと呼ばれる分岐装置で、複数の電話機へ接続する方法です。複数台の端末を1本でまとめて接続できるため、ケーブルの総距離を短縮でき、省スペースに優れています。シンプルな構成のオフィスでは今も採用されることが少なくありません。
バス配線のメリット
バス配線の利点は、ケーブル全体の長さを抑えられることと、設置作業が比較的簡単に行える点です。ローゼットを中継点として利用することで、主装置からの直線的な配線が不要となり、電話機の追加も分岐点から行えます。見た目もスッキリしやすく、取り回しが効率的です。
バス配線のデメリット
一方で、バス配線はトラブルが広範囲に影響する点が欠点です。たとえば、幹線ケーブルに断線が起これば、そのケーブルにつながるすべての電話機が使用できなくなる可能性があります。
また、原因の特定にも時間がかかることがあり、大量の受電があるオフィスでは致命的なトラブルにつながる恐れがあります。
LAN配線
LAN配線は、IP電話などインターネット通信を利用する電話機で採用される最新の方式です。電話専用線ではなく、HUBを介してLANケーブルを通じて主装置と各端末を接続します。データと通話を同じネットワーク内で処理を行い、クラウドPBXやIP-PBXとの親和性も高い点が特徴です。
LAN配線のメリット
LAN配線では、ネット回線と電話回線を1本のLANケーブルで統合できます。そのため、配線がシンプルになり、オフィス内の設備管理が容易になる点が長所です。既存のLANネットワークをそのまま活用できる場合は、新たな工事が不要なことも多く、導入コストの削減にもつながります。近年では中小企業からも注目されています。
LAN配線のデメリット
ただし、LAN配線では電力供給の手段に注意が必要です。HUBを経由するだけでは、電話機には給電できません。PoE（給電機能付き）HUBや個別の電源アダプターが必要です。アダプターを使うとデスク周辺のケーブルが煩雑になるため、レイアウト次第ではかえって不便になる可能性もあります。
配線に関する注意点
ビジネスフォンの配線を検討する際には、単に電話機をつなげれば良いわけではありません。ここでは、配線に関する判断や作業を進めるうえで、注意しておきたいポイントを4つ解説します。
配線方法は型番で判別する
現在使用しているビジネスフォンがどの配線方式かを見極めるには、型番を確認するのがおすすめです。それぞれの配線には次のように型番が割り振られています。
- スター配線：S
- バス配線：BやL（＋次がS以外）
- LAN配線：IP
また、表記はメーカーごとに若干異なることもあります。型番をインターネットで検索したり、メーカーや販売店へ問い合わせたりすることで、より正確な方式を把握することが可能です。
主装置によって配線できる台数が決まっている
主装置は無制限に電話機を接続できるわけではなく、製品ごとに対応可能な台数が定められています。小型の主装置では10台前後、大規模モデルでは数千台規模まで対応可能ですが、増設したい端末数が上限を超えると接続できません。
特に将来的な拡張を見越す場合は、事前に主装置の収容台数を確認し、余裕のある機種を選ぶことが重要です。電話機購入前のチェックがトラブル防止につながります。
工事が必要なケースがある
電話を新規導入時や外線・内線の増設する場合は、工事が必要になることがあります。主装置の構成や既存ケーブルの状況により、追加工事なしで対応できる場合も少なくありません。
しかし、ケーブルの引き直しや端末の増設位置によっては引き回し工事が必要になることもあります。工事の有無や費用は、事前に業者へ確認することが大切です。
クラウドPBXの場合は配線不要
近年注目されているのがクラウドPBXです。クラウドPBXは、従来のように物理的な主装置をオフィス内に設置せず、クラウド上のサーバーで通信を制御するシステムです。インターネット環境さえあれば、外線・内線の接続に特別な配線工事は不要で、スマートフォンやPCを活用できます。
ただし、デスクに有線型IP電話を設置するには、LAN配線が必要です。Wi-Fi対応機種やモバイル内線化を活用すれば、完全にケーブルレスな運用もできます。
ビジネスフォンの配線に関するよくある質問
ここでは、配線に関するよくある質問をいくつか紹介します。
異なる配線でビジネスフォンをつなぐとどうなりますか？
配線方式の違う電話機を接続しても、基本的には正常に作動しません。主装置と異なる方式の端末をつなぐと、ディスプレイに何も表示されず、通話もできない状態になります。
また、同じ方式同士でも機種が合わなければエラーが出ることがあります。システム不具合やダウンの原因になる可能性もあるため、事前に配線方式を確認し、対応機種を選ぶことが重要です。
ビジネスフォンの配線工事は何をしますか？
配線工事では、電話機の増設・移設・撤去などを主に行います。増設時は主装置から新たな電話機へケーブルを延ばし、設定を加える必要があります。移設の場合は、レイアウトによって延長や引き直しが必要です。
撤去時にはケーブルの整理もあわせて作業するのが一般的です。大幅なレイアウト変更がある場合は、断線リスクを避けるためにも工事業者に事前相談し、安全なケーブルの配置を構築することが大切です。
まとめ
この記事ではビジネスフォンの代表的な配線方法とそれぞれの長所と短所を解説しました。ビジネスフォンの配線は、運用の安定性やトラブル対応に直結する重要なポイントです。
配線方式や主装置の仕様を正しく把握し、適切に工事・管理することで、安心で快適な通信環境が整います。配線工事の際は、将来的な増設やレイアウト変更も見据えた計画を立ててみてください。
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